Q:飲食店を経営しています。無料求人広告の電話勧誘があり、無料ならと思って求人広告を出しました。でも、突然、広告会社から広告料の請求が届いたのです。無料広告期間が経過したから契約が有料広告契約に自動更新されたとのことでした。契約書を見てみると小さな字で、有料の契約に自動更新されることが書いてありました。事業者は消費者保護の法律も適用されないと聞きました。私がよく契約書を読まなかったからいけないのかもしれませんが、これは広告料を支払わなければならないのでしょうか?
A:事業者は消費者保護の法律(消費者契約法、特商法等)の適用外ではありますが、信義則・公序良俗といった一般条項、公序良俗規定、不法行為や民法96条の詐欺規定などによって保護される可能性があります。特に近年各地で無料求人広告のトラブルが増えており、中には悪質な業者も多くいます。特に地方の医療機関、保育園、介護施設などが多く被害に遭っていると言われていますので、無料求人広告でトラブルの際には自分で対処しようとせずにすぐに弁護士に相談されることをお勧めします。
当事務所で、企業様から最近増えてきた相談の1つに無料求人広告のトラブルがあります。
もともとは無料の求人広告を出しませんかという勧誘を受け、契約したら、いつかのタイミングで自動的に有料契約に移行して広告料の請求をされてしまった、有料の契約になるなんて知らなかったというようなケースです。
今回は、このような無料求人広告のトラブルについて解説していきます。
1 企業は消費者保護の法制度によって保護されない?
契約者が消費者の場合、消費者契約法や特定商取引法などを用いて、クーリング・オフや取消・無効を主張できる場合があります。
消費者被害類似の被害にあった小規模事業者も当事者間の情報・交渉力の格差があり、消費者となんら変わらないことを理由に消費者保護の法律によって保護すべきという学説もありますが、基本的に多くの裁判例はこれを否定しています。
小規模事業者の事業によってなされたものについては、特定商取引法によるクーリング・オフ権の行使もできないと解されています。
無料求人広告詐欺は、そのような小規模事業者にターゲットを絞った悪徳商法の一種と言われています。
無料求人広告トラブルにおいては、小規模事業者といっても、広告事業者との間に見られる情報力の格差や、相手方事業者の行為態様の悪質さなどに着目し、信義則・公序良俗といった一般条項の活用によって保護が図れる場合が多くあります。
そのため、無料求人広告トラブルに遭ってしまった場合には、いち早く弁護士に相談して対応する必要があります。
弁護士に相談しても、契約書どおりだから、払うしかない、とアドバイスされたという話も聞きますが、無料求人広告詐欺は社会的にも広めてはならない悪徳商法の1つであり、厳しく対応すべき必要があるものと私は考えています。
2 無料求人広告トラブルのパターン
悪質な無料求人広告業者のパターンは概ね同じです。
どの業者も申込書や重要事項説明書などに自動更新で有料化することを形式的には記載しています。しかし、誤解を招く表現だったり、小さな文字で目に留まらないような記載だったりし、営業に口頭で無料を強調されると頭に残らないという状況に陥り、有料の契約の認識がないまま契約をしてしまいます。
3 被害の状況
無料求人広告詐欺は、元手がかからない複製が簡単な手法であり、インターネットを利用して、全国の小規模事業者がターゲットになっていると言われています。
特に、医療機関(特に歯科医院)、保育園、介護施設は各地方で狙われている状況にあると言われています。
4 無料求人広告トラブルに遭ってしまったら
繰り返しにもなりますが、弁護士に相談し的確な対応をするのが重要です。
中には遠方の管轄で提訴してくる例もあり、遠方だからといって無視してしまうと判決が確定してしまうこともあります(弁護士が移送申立てをすれば業者が訴えを取り下げる事例も多いです)。
ケースによって最善の対応が異なり、弁護士による専門的な対応が必要になるため、まずは弁護士に相談すべきかと思います。
5 弁護士費用
以下に、無料求人広告トラブルにおける当事務所の弁護士費用の目安を掲載しておきます。
【無料求人広告トラブルにおける弁護士費用の目安(税込)】
訴訟になっていない場合 | 着手金11万円〜 成功報酬なし |
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訴訟になった場合 | 着手金33万円〜(訴訟前からご依頼していた場合には追加着手金22万円〜) 報酬金:経済的利益(請求された場合、請求された金額と実際に支払うことになった金額の差額)の17.6パーセントの金額 |